はじめに
会社破産を検討し始めた際に、経営者の方がまず最初に頭に浮かぶのは「取引先などの債権者の対応をどうしよう…」ということだと思います。
以下では、債権者へはどのように対応したらよいかについて説明します。
破産を検討・予定していることを誰にも話してはいけない
まずなにより一番重要なことは、「会社破産を検討、予定していることを誰にも話さない」ということです。
「長年付き合いのある取引先等には迷惑をかけたくないから、会社破産を検討、予定していることを事前に話しておきたい」と考える経営者の方は多いですし、そのように考えるのが人として当然なことだと思います。しかし、会社破産を行う弁護士の立場からは「それはやってはいけません」と助言せざるを得ません。
なぜなら、もし会社破産(予定)の情報が経営者以外の外部に洩れてしまうと、どこからか噂が広がってしまい、債権者が会社に殺到し、会社の在庫商品や金品を奪われたりするなどの大混乱が生じる可能性があります。その他にも、銀行が会社名義の預金口座を凍結したり、税務署や年金事務所が預金口座や売掛金を差し押さえてくる可能性があります。
このように、会社破産することを外部の者に事前に教えてしまうと、収拾がつかなくなってしまう危険があるため、誰にも話さないまま弁護士と入念に準備を進め、タイミングを計って債権者に一斉に伝えることがセオリーです。
そこで、まずは弁護士法人焼津リーガルコモンズの無料法律相談をぜひご利用ください。
債権者へ受任通知の送付
弁護士法人焼津リーガルコモンズに会社破産をご依頼頂いた場合、弁護士法人焼津リーガルコモンズからすべての債権者に対し、直ちに受任通知を送付します。
「受任通知」とは、かいつまんで言えば、「この会社(依頼者)は弁護士法人焼津リーガルコモンズの弁護士が代理人となって破産手続を行う予定なので、今後は支払・返済をストップします。今後は会社(依頼者)への債権の取立や返済催促などの連絡は一切しないようにしてください。何か質問や要望等の連絡したいことがあれば、全て弁護士法人焼津リーガルコモンズにしてください。」という内容の連絡書面のことをいいます。
受任通知は通常郵送しますが、緊急の場合には郵送前にFAX送信を行うこともあります。
受任通知を債権者に送付すれば、債権者への支払・返済を停止することができ、また、会社と代表者個人に対する債権の取立や返済催促が止まります。債権者対応(破産に関する質問やクレーム対応など)は全て弁護士法人焼津リーガルコモンズの弁護士が行います。経営者の方自ら対応する必要はありません。
金融機関・貸金業者等への対応
弁護士への依頼後、経営者の方が金融機関・貸金業者・債権回収会社(サービサー)等に対応することは特にありません。
受任通知を送付することによって、金融機関・貸金業者・債権回収会社は法的に債務者(会社・経営者個人)に対する取立行為や返済催促、直接の連絡行為が禁止されます。
もっとも、受任通知が金融機関に届いた時点で、金融機関は預金口座を凍結し、その時点で口座に保管されていた預金を借金と相殺してしまいます。そのため、受任通知を送付する前に預金口座からお金を全て引き出しておくことは必須です。
また、会社と同時に代表者個人も破産又は個人再生する場合、受任通知によっていわゆる「ブラックリスト(個人信用情報機関)」に登録され、以後数年間クレジットカード等の利用ができなくなります。「今後カードは利用できなくなるから…」と言って、受任通知発送直前にキャッシングやショッピングを利用してしまうと刑法の詐欺罪になりますので、絶対にしないようにしてください。
なお、受任通知と合わせて、金融機関、貸金業者(消費者金融など)には取引履歴を開示するように要請します。
リース会社への対応
リース会社については、受任通知送付後1~2週間ほどで、リース会社から弁護士法人焼津リーガルコモンズに「提携業者がリース品(コピー機、電話機、パソコン、自動車など)を引き揚げに行きます。業者の連絡先、担当者をお伝えするので、引き揚げ日時を調整してください。」という連絡が来ます。実際の日時調整や引き揚げの立会い等は、経営者の方に直接行ってもらうことになります。
取引先など一般の債権者への対応
さきほど「受任通知を債権者に送付すれば、債権者への支払・返済を停止することができ、また、会社と代表者個人に対する債権の取立や返済催促が止まります。」と述べましたが、法的効力があるのは金融機関・貸金業者・債権回収会社のみであり、取引先会社やお金を借りた友人、知人など、一般の債権者に対しては法的な効力はありません。
事実上取立や支払催促を抑止する効力は十分にあるのですが、一般の債権者の中には受任通知が届いた後も取立や返済催促をし続ける会社・個人の方もいらっしゃいます。
一般の債権者から執拗に電話がかかってくることが予想される場合には、代表者・経営者の方は携帯電話を解約し、新規の電話番号を取得する等で連絡先を変更した方がよい場合もあります。また、債権者によってご自宅に不法侵入されたり、暴力・脅迫行為をされた場合は、躊躇せず直ちに警察に連絡することが重要です。
なお、受任通知を債権者に送る際には、「貴社の債権額を教えてください」という内容の債権届を同封し、正確な債権額を把握することに努めます。
よくある質問
受任通知は依頼した後すぐに送付してもらえますか?
債権者一覧表を作成頂ければ、通常直ちに送付します。
もっとも、受任通知を送付することで逆に混乱が生じる場合(例えば、会社に商品を納入してもらったが買掛金をまだ支払っていない取引先がおり、受任通知を送付してしまうと、商品を持ち去るために取引先が会社に押し掛けてくることが想定される場合など)は、受任通知を送付しないまま直ちに会社破産を申し立てる場合もあります。
この場合でも、裁判所に破産申立を行ってしまえば、裁判所から債権者に破産手続開始の通知書が送られますので、やはり会社に対する債権の取立や返済催促が止まります。債権者の対応は全て弁護士法人焼津リーガルコモンズの弁護士が行いますので、経営者の方は自ら対応する必要はありません。
また、会社に税金や年金の滞納がある場合、取引先から売掛金が入金される前に税務署や年金事務所に受任通知を送付してしまうと直ちに売掛金が差し押さえられてしまう危険があるため、売掛金の入金を確保するまで税務署や年金事務所には受任通知を送付しないこともあります。
なお、受任通知を送付したにもかかわらず、その後1年近く経っても破産申立をしないような場合、債権者は破産を待ちきれずに会社(および連帯保証人である経営者・代表者)に対し訴訟提起をして財産に強制執行をしてくることもあります。経営者の方には早期に破産申立を行うべく、弁護士費用と必要書類等を速やかにご準備頂くことをお願いしています。
もっとも、強制執行される財産(不動産、預貯金、自動車、生命保険の解約返戻金など)がなければ、訴訟提起も強制執行も特に心配する必要はありません。
破産する際、債権者説明会を開催して直接謝罪や説明をしなければいけないですか?
よくテレビのニュース等で、経営陣が沢山の債権者に囲まれて謝罪をしているような映像が流れており、「あのようなことをやるのか…」と心配される方もいるかもしれません。
しかし、あれは社会に大きな影響を与えるような会社(例えば旅行関係、美容関係、自動車学校、英会話学校等の消費者被害型の場合)が破産する場合に、多数の債権者に経緯を説明するために破産手続とは関係なく任意で行われるものです。普通の中小企業の破産の場合には、受任通知を送付するだけで十分足りますので、ご安心ください。
なお、破産申立後に裁判所で「債権者集会」というものが行われますが、それには破産者(経営者)も出席しなければなりません。とはいえ、「債権者集会」は破産管財人が「会社が破産に至った事情」や「資産状況」などを債権者に報告する場で、破産者が債権者に謝罪をする場ではありません。
「債権者集会」というので、必ず債権者が出席するかと思うかもしれませんが、そんなことはありません。債権者が誰も出席しないまま行われることも数多くあります(中小企業の破産ではそちらの方が多いかもしれません)。とりわけ、金融機関・貸金業者(消費者金融)・リース会社等はほぼ出席しません。
「債権者に囲まれ糾弾されるのではないか…」と心配される方もいらっしゃいますが、仮に数人の債権者が債権者集会に出席しても裁判所、破産管財人は淡々と事務的に進めますので、心配いりません(万が一、大声で威嚇する債権者の方がいたとしても、裁判官が制止します)。
債権者への対応で注意しなければいけないことはありますか?
詳しくは「会社破産の際に絶対にしてはいけないことは?」をご覧頂ければと思いますが、一部の債権者だけに支払・返済をすることは絶対にしないようにしてください。
「数十年来の付き合いのある取引先にだけは迷惑をかけられないのでどうしても支払いたい…」という気持ちから、一部の債権者に支払・返済を希望される経営者の方がほとんどですが、そのような行為をしてしまうと、後になって破産管財人がその債権者に対し、「受け取ったお金を返しなさい」と取り戻しの請求を行います。場合によっては訴訟にまで発展することもあり、逆に迷惑をかけてしまうことになります。