はじめに
これまで会社破産について詳しく述べてきましたが、会社が経営破綻に陥った場合に選択できる手続(倒産手続・債務整理手続)は会社破産に限られません。
ここでは、会社で利用可能な倒産手続がどういったものがあるのかについて説明します。
2種類の倒産手続(清算型と再建型)
会社が利用できる倒産手続は、①会社の事業を終了する清算型と、②会社の事業をこれまで通り継続する再建型の大きく2つの種類に分かれます。
- ① 清算型の倒産手続:(具体例)会社破産・通常清算・特別清算・(清算型)私的整理
- ② 再建型の倒産手続:(具体例)民事再生・会社更生・(再建型)私的整理
上記のように、これまで説明してきた会社破産は、清算型の倒産手続に分類されます。もっとも、会社自体は大きな負債を抱えているものの、会社の事業または一部の事業部門が利益を出しているような場合、その黒字の事業を存続させるために、会社破産手続に事業譲渡を絡めて、再生の手段として会社破産を利用する場合もあります。
例えば、①漁業部門と②製造加工・販売部門に分かれている水産会社A社について、①は赤字であるものの、②が黒字であるような場合に、A社の②だけを別のB社に譲渡し、B社から事業譲渡の対価を受け取ってA社の債権者に配当し、A社を破産するような場合です。
中小企業の倒産手続では会社破産が選択されることが圧倒的に多いですが、会社破産手続との比較をするためにも、本サイトでは、
- (1) 特別清算
- (2) 民事再生
- (3) 私的整理(清算型・再生型)
について説明します。
よくある質問
会社の「破産」と「倒産、債務整理」は同じ意味ですか?
よく日常会話やテレビなどで「破産」「倒産」「債務整理」などをすべて一緒にまとめて同じものとして語られることが多いですが、「破産」と「倒産、債務整理」は厳密には違います。
「破産」は数ある「倒産、債務整理」の手続の中の1つの方法です。
「倒産」には、①事業を終了する場合(いわゆる清算型)の「破産・特別清算」と、②事業を継続する場合(いわゆる再建型)の「民事再生・会社更生」があります。
事業を終了する場合の1つが「破産」で、最も一般的な「倒産、債務整理」の方法になります。
なお、「倒産」というのは主に会社が経済的に破綻した場合に使われる事実状態を表す用語であって、法律用語ではありません。
「通常清算」について教えてください。会社の「破産」とはどんな違いがありますか?
簡単に違いを説明すると、債務(借金・買掛金・ローン・リース代金など)が資産よりも多い場合に会社の事業を終了するときは「破産」になります。
他方で、債務がない、または債務よりも資産が多い場合に会社の事業を終了するときは「通常清算」になります。
通常清算は、
- ① 会社の株主総会等で解散決議等を行い
- ② 株主総会等で選ばれた清算人が会社の財産の換価手続を行いつつ
- ③ 債権者がいる場合には債権者全員に返済をし
- ④ それでも残余財産が残った場合には株主等の出資者に配当をし
- ⑤ 最後に法務局に会社を閉鎖する登記申請を行います。
これによって、会社は法的に消滅します。
昨今、会社は黒字であるものの、経営者がすでに高齢で、代替わりをしたいものの後継ぎがいないと悩まれている会社が多く存在します。このような後継者不足で会社を閉める決断をされたときには、「通常清算」を行うことが多いと言えます。
債務がない場合に会社を閉める方法は「通常清算」しかありませんか?
「通常清算」は「破産」と異なり裁判所への申立等の手続が不要なので、弁護士が必ずしも必要な手続ではありません。そのため、税理士や司法書士が、「破産」より安い費用で受任してくれますが、それでも費用はかかってしまいます。
そこで、「債務はなく営業も停止して今後再開しない」場合は、「通常清算」をせずに単に税務署や市役所等に「休眠届・休業届」を提出する方法もありえます。
この方法は「通常清算」のように費用がかかりませんし、法人住民税の均等割分(最低7万円~)を免れられる可能性があります。
ただ、自治体によっては、法人地方税の均等割を免除してくれない場合もあり、各期の税務申告はこれまでと変わらず必要です。また、「通常清算」では法的にも会社が消滅するのに対し、「休眠、休業」は法的には会社は存続したままです。
このように、「通常清算」と「休眠、休業」はそれぞれメリット・デメリットがあるといえます。どのように会社を閉めるか悩まれている方は、当事務所の法律相談をご利用ください。
会社の「破産」と「休眠、休業、廃業」はどんな違いがありますか?
「破産」と「通常清算」の違いの質問の回答と同様に、債務(借金・買掛金・ローン・リース代金など)が資産よりも多い場合は「破産」になり、債務がない、または債務よりも資産が多い場合は「休眠、休業、廃業」という方法が選択できます。逆に言うと、債務が残ったままでは「休眠、休業、廃業」はできません。
前の質問で回答したように、「休眠、休業、廃業」は法的には会社は存続したままであり、会社を法的にも消滅させるためには「通常清算」もしくは「破産」をする必要があります。