個人破産のよくある質問
会社破産をせずに、経営者・代表者のみが個人破産することはできますか?
残念ながら、個人破産のみ行うことはできません。どこの裁判所でも代表者が個人破産をする場合には必ず会社と一緒に破産申し立てをするように要請されます。
なぜかというと、個人破産だけを認めて会社破産をしないでよいと認めてしまうと、誰も会社破産をしなくなってしまい、実態のない会社だけが放置されて残り、社会が混乱してしまうからです。
また、会社が破産しないまま残ってしまうと、債権者は税務上損金処理ができなくなるなどの不利益が生じてしまいます。そのため、逆に債権者である金融機関から、「このまま借金を返済できないのであれば、こちらとしても損金処理をしたいので、破産されてはいかがですか?」などと提案される経営者の方もいらっしゃるくらいです。
なお、上記とは逆に、会社破産のみ行い、代表者の個人破産は行わないということは可能です。
家族に知られずに個人破産はできますか?
不可能ではありませんが、個人破産される場合ご家族に与える影響は大きく、その後の生活のことなども含めてご家族の協力は不可欠であるため、ご家族にはちゃんと説明しておく方がよいでしょう。
連帯保証人である経営者は常に個人破産をしなければいけませんか?
常に個人破産しなければいけないわけではありません。ただ、破産しない限り連帯保証債務は残りますので、債権者から請求され続けます。資産があれば強制執行をされますし、新たに会社に勤務するようになっても、給料を差し押さえられる危険もあります。
もっとも、経営者が高齢で、資産がなく今後は年金収入で生活していくという場合は、差し押さえられる財産がないので、そのような場合は破産をしない方もいらっしゃいます。
会社破産をせずに、経営者のみが個人破産することはできますか?
残念ながら、個人破産のみ行うことはできません。どこの裁判所でも代表者が個人破産をする場合には必ず会社と一緒に破産申立をするように要請されます。
なお、会社破産のみ行い、代表者の個人破産は行わないということは可能です。
経営者が日本国籍でなくても会社破産、個人破産は可能でしょうか?
日本国籍でなくとも会社破産・個人破産のいずれも問題なく可能です。
破産をすると家族に請求がきますか?離婚する必要はありますか?
家族が会社の債務・経営者個人の債務の連帯保証人などになっていない限り請求が来ることはありません。ですので、破産をするために離婚をする必要はありません。
家族が会社の債務・自分の債務の連帯保証人になっていますが、どうしたらよいですか?
残念ながら破産で債務が免責されるのは経営者だけなので、連帯保証人に請求が来てしまいます。連帯保証人も支払えない場合は、連帯保証人も個人破産するしかありません。
個人破産すると子供の進路や就職に何か悪影響はありますか?
会社破産、経営者が個人破産をされてもご子息の進路や就職に悪影響はほぼありません。公務員になることも問題ないです。
ただし、ご子息が金融機関に就職したい場合、金融機関は会社内部で家族が破産をしているか否か等を審査基準で設けている可能性は全くないとは言い切れず、もしかしたら影響がある可能性はあります。この辺りは何とも言えないのが正直なところです。
破産すると住民票や戸籍、免許証にそのことが記載されてしまいますか?
住民票等に破産したことは記載されませんのでご安心ください。
破産をすると選挙権はなくなりますか?
選挙権がなくなることもありません。ご安心ください。
自由財産を99万円分まで確保できるそうですが、その基準時はいつですか?
基準時は「破産手続開始決定の時点」です。
裁判所に破産申立をすると、静岡地方裁判所では緊急案件の場合を除き、通常1~2週間後に「破産手続開始決定」が出ます。この基準時に99万円を超える財産を保有している場合には、99万円を超える部分については破産管財人に引き継がないといけない財産になりますので、ご注意ください。
会社に残った財産を経営者の今後の生活のために残すことはできますか?
残念ながらできません。会社の資産は会社のもので、経営者個人のものではありません。
会社の資産は全て破産申立代理人(弁護士法人焼津リーガルコモンズの弁護士)に預ける必要があり、破産申立代理人は破産管財人に引き継ぐ義務があります。
経営者は個人破産の申立後働いても大丈夫ですか?
もちろん働いて大丈夫です。会社破産のみの場合でも、代表者が個人破産した場合でも、働いてはいけないという制限は一切ありません。
破産申立後、サラリーマンとして会社に勤務したり、アルバイトをしたり、個人事業主として働いたり、別会社を設立したりすることが通常です。
個人破産後も新会社を設立することは可能ですか?
新会社を設立することは可能です。以前は取締役の欠格事由として破産がありましたが、現在このような制限はありません。そのため、破産しても数ヶ月間取締役になれないということはありません。
現在と同じ場所、似たような会社名で、別会社として事業継続は可能ですか?
前述のように新会社を設立して同じ事業を行うことは可能ですが、「現在と同じ場所、似たような会社名で、同じ代表取締役」で行う場合、例えば滞納税などがあれば、国税局や税務署から「同一の会社」として債務も承継したとみなされてしまうといった危険が大なり小なりあります。
ですので、新会社を設立して同じ事業を継続する場合でも、「旧会社とは違う場所で、似ていない会社名」にすることで上記のようなリスクを回避できますので、新会社を設立して事業をされたい方にはそのようにされた方が賢明でしょう。
なお、従前の取引先と今後も継続して取引を行う場合には、契約書なども全て破産する会社から新会社に名義を変更する必要があります。
会社破産をした後、従前と同じ業種・事業を個人事業主として続けていくことは可能ですか?
もちろん可能です。ただし、会社の売掛金や財産(機械・工具類)はあくまで破産する会社の財産ですので、それを個人のものとすることはできません。
また、破産会社の名刺や会社名をそのまま継続利用するのは誤解が生じるので避けるべきです。加えて、取引先との契約についても、全て破産会社から個人名義に変更する必要があります。
会社名義の携帯電話やインターネットの契約、自動車をそのまま個人で継続して利用したいのですが、可能でしょうか?
携帯電話やインターネットのプロバイダ契約は、個人に名義変更すれば何の問題もなく継続して利用可能です。
もっとも、利用料金を滞納しておりその金額が多額である場合は、滞納金を支払わないと継続利用できないため、個人で新たに別の携帯電話会社やプロバイダ会社と契約した方がよいでしょう。
次に、自動車ですが、多額のローンが残っている場合はローン会社が自動車を担保に取っているため引き揚げてしまいます。ただし、ローンが残っておらず自動車の価値も0円であるような場合は名義変更をすれば継続利用できます。また、自動車の価値が0円でなくても、例えば妻や家族がその自動車の「適正価格」を会社に支払えば、妻や家族に名義変更して継続利用できます(経営者個人の名義にしてしまうと、個人破産する場合にその自動車の価値が自由財産にカウントされてしまうので、注意が必要です)。
経営者が個人破産する際に、私生活で注意した方が良いことはありますか?
まず、馬券・宝くじといったギャンブル行為、株・FXなどの投機的行為や、キャバクラ・風俗店の利用などの浪費行為、その他「免責不許可事由」に該当する行為は直ちにやめてください。
また、細かいことですが、現在、毎月クレジットカード払いになっている家賃・電気・ガス・水道・電話・インターネットなどは、今後クレジットカード払いにならないように、銀行口座引落しやコンビニなどでの現金払いに変更しておいた方がよいでしょう。
経営者が個人破産をするときに見落としやすい点があれば教えてください。
以前に友人や別会社の連帯保証人になっていたことを忘れてしまい、債権者一覧表に記載しないまま破産手続が終了してしまうことがごく希にあります。
このような場合でも、裁判所から免責許可を受ければ原則支払義務は負いません。しかし例外的に、債権者一覧表に載せていなかった債務について免責されずに支払義務を負う場合があります。それは、債権者を債権者一覧表に故意に載せなかった場合や、載せなかったことについて重大な過失がある場合です(破産法第253条3号)。
「故意」に載せなかった場合は言わずもがなですが、「過失」の場合は「重大な」過失か否かで結論が分かれます。つまり、「過失が大きい」場合は免責されず、「過失が小さい」場合は免責されますが、この「過失の大小」は債権者から訴訟提起されたときに裁判で判断されます。
このような場合、銀行などの金融機関は裁判などはせずにほとんど免責してくれますが、一般の会社では対応は様々です。
破産の際に債権者一覧表に載せなかった「過失が大きい」と主張し、訴訟提起して全額の支払いを求めてくる可能性もありますし、裁判にはせずに交渉で済ませてくれる可能性もあります。
せっかく破産をしても、後々このようなトラブルに巻き込まれる可能性があることから、破産をする場合にはくれぐれも債権者の記載漏れがないように、注意してください。