はじめに
会社破産を検討されている経営者の方の中には、「そもそも自分の会社は破産できるのだろうか?」と疑問に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、相談者の方から「会社の破産ができない場合もあるのですか?」とご質問を受けることも多いです。
結論を先に申し上げると、会社が置かれている状況によって、破産ができない場合はいくつかあります。
例えば、
- ① 会社の代表者が亡くなっている場合、代表者不在のままでは通常は破産をすることはできません。
- ② 「不当な目的」で破産する場合も、破産することはできません(どのような場合に「不当な目的」にあたるかは後述します)。
- ③ 破産費用を裁判所に支払うことができない場合も、破産はできません。
- ④ 会社に借金(債務)がない場合も、破産をすることができません。この場合には、通常清算という手続をとる必要があります。
以下では、①~④について個別に詳細をお答えいたします。
弁護士法人焼津リーガルコモンズでは、経営が厳しく破産を考えている経営者の方など、会社破産の申立てについて無料で弁護士にオンラインでご相談できます。お一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。
会社の自己破産ができないケース
① 代表者が亡くなっている場合
経営者のご家族から、「亡くなった夫(親)の経営していた会社を破産したい」とご相談を受けることがあります。
会社破産において破産者となるのは会社そのものですが、その破産申立てを実際に行うのは、通常、会社の代表者(代表取締役)です。
そのため、もし代表者が亡くなっている場合には、そのままでは会社の破産申立てをすることができません。
ではこの場合、どうすれば会社破産をすることができるのでしょうか。
まず第一に、新しい代表者を選任できるかどうかがポイントになります。
新しい代表者を選任できさえすれば、その新代表者の下で会社の破産申立てをすることができるからです。
新しい代表者を選任できるか否かは、会社の役員構成(取締役の人数、取締役会設置会社か否か等)、株主構成などに左右されますので、まずはその点を確認しましょう。
また、新しい代表者の選定が困難な場合でも、亡くなった代表者以外に取締役が残っている場合には、その取締役個人が会社の破産申し立てをすることができます(法律用語で「準自己破産」といいます)。
そのため、亡くなった代表者以外に取締役がいる場合には、その取締役によって破産申し立てが進められるかがポイントになります。
以上のように、代表者が亡くなられた場合でも、弁護士に相談すれば、ご事情を踏まえて会社破産ができないかを検討しアドバイスいたします。
② 不当な目的で破産申し立てをする場合
法律上、「不当な目的」で破産をすることはできないとされています(破産法30条2号)。
この「不当な目的」がどういう場合なのかが気になるところですが、端的にいうと、債権者の権利が著しく害されるような場合です。
例えば、
- ① 最初から返済するつもりがないのにもかかわらず、金融機関から借入れをし、全く返済をしないまま借金を踏み倒す目的で破産申立をする場合
- ② 実際には会社に資産が残っているにもかかわらず、資産を隠し、経営破綻を装って破産申立をする場合
などは、「不当な目的」と判断されます。
裁判所が一度破産申し立てを認めたとしても、その後も破産管財人が「不当な目的」での破産ではないかを厳しくチェックします。
場合によっては破産犯罪として刑事罰を受ける可能性もありますので、くれぐれも気を付ける必要があります。
これまでの話を聞くと、「一度も返済していない債権者がいるから、うちは破産できないのかな…」と心配される方もいらっしゃるかと思います。
一度も返済していないとしても、やむを得ない事情等があり詐欺的な借入行為と評価されなければ、破産は認められます。
破産できるかどうかは会社の状況によって異なりますので、ご心配であれば弁護士にご相談ください。
③ 破産費用を裁判所に支払うことが出来ない場合
破産をする場合、裁判所に「予納金」という費用を支払う必要があります。
「予納金」は、破産手続のために必要な費用(破産管財人の報酬等)に使われます。
会社の破産は、通常個人の破産よりも複雑な場合が多いので、個人破産の場合よりも予納金が高額になります。
予納金の額は裁判所及び事案によって異なりますが、東京地方裁判所では(特定管財事件の場合)、以下のような基準が用いられています。
負債額 | 必要な予納金額 |
---|---|
5000万円未満 | 70万円 |
5000万円以上1億円未満 | 100万円 |
1億円以上5億円未満 | 200万円 |
5億円以上10億円未満 | 300万円 |
10億円以上50億円未満 | 400万円 |
50億円以上100億円未満 | 500万円 |
100億円以上 | 700万円 |
上の基準が用いられるのは特定管財事件と呼ばれる破産事件の場合です。
特定管財事件として扱われるのは、
- 社会的に影響力の大きい破産事件
- 大企業の破産事件
- 債権者が破産申立をした事件
- 弁護士に依頼せずに自分で破産申立てをした場合
に限られます。
これに対し、弁護士に破産申立てを依頼した場合には、少額管財制度というものがあり、少額管財事件として取り扱われると、裁判所へ支払う予納金は最低20万円で済みます。
これは裁判所の弁護士に対する信頼(法律の専門家である弁護士が破産申立てに関与していることへの信頼)に基づいて、予納金の額を少額にすることを許されているのです。
弁護士に依頼すると弁護士費用もかかり、より高額になると思われるかと思いますが、場合によっては費用を低額に抑えることが可能になります。
④ 会社に借金(債務)がない場合
会社に借金(債務)がない場合や、債務より資産が多い場合には、そもそも破産をすることが出来ません。
このような場合に会社の事業を終了させたいときは、「通常清算」という手続をとることになります。
通常清算とは、まず会社を解散させ、会社に残った財産(預金・不動産・機械工具類等)を現金に換価し、残った現金を債権者や株主に支払い、法務局に閉鎖登記を行う一連の手続のことをいいます。
会社は黒字であるものの、経営者が高齢で後継ぎがいないような場合には、この「通常清算」を行うことが多いと言えます。
弁護士は、破産だけでなく通常清算の手続きも問題なく対応可能です。経営されている会社の状況に応じて、会社を閉める適切な方法をご説明しますので、まずは弁護士にご相談ください。
まとめ
以上が会社の自己破産ができないケースとその原因になります。
ご相談者の方のおかれている状況が、本当に破産できないケースに該当するのか、それを判断することは弁護士であっても難しいものです。
この記事をお読み頂き、お一人で「自分の会社は破産できないのではないか…」などと思い悩まないでください。まずはお気軽に、会社破産に精通している弁護士にご相談ください。
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弁護士法人焼津リーガルコモンズでは会社破産の初回相談は無料です
経営者の方は、会社の経営について周りに相談できる人もおらず、一人で悩まれている方も多くいらっしゃいます。
もし会社破産が少しでも頭によぎられた場合には、できるだけ早い段階で会社破産に精通している弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士法人焼津リーガルコモンズでは、会社破産の申立てについて法律相談を初回無料で行っています。事務所での相談だけでなく、オンラインでの相談も実施中です。
当事務所には、会社破産に精通した弁護士が在籍しております。経営者の方は、まずは一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
当事務所での無料法律相談の詳細は、「無料オンライン相談 無料法律相談」をご覧ください。
会社破産に必要な費用について
(1)弁護士費用等の目安
会社破産の弁護士費用は、債権者数・負債額に応じて着手金55万円~(税込)です(具体的な金額は、会社の規模等によって異なります)。報酬金はありません。
このほか、裁判所に納める実費(収入印紙、郵券代や破産管財人の報酬等)として、20万円程度かかります(会社の負債状況等で金額が異なります)。
また、会社破産とは別で経営者等が個人破産をする場合の弁護士費用は、1人33万円(税込)です。
これらの費用は、会社に残された資産(預金・売掛金等)や今後入金される予定の売掛金等から捻出することが可能です。
税務署等に売掛金を差し押さえられてしまうと、弁護士費用に利用することができなくなってしまうため、そうなる前にご相談ください。
費用についての詳細は「安心の弁護士費用」をご覧ください。
(2)分割払いもご相談可能です
弁護士費用は、ご相談者様の経済的状況に応じて分割払いも可能です。ただし、実際に裁判所に対し破産申立を行うのは、弁護士費用の積立が完了した後になります。その場合でも、受任通知は委任契約後速やかに債権者に送付いたします。債権者からの支払督促は止まりますので、ご安心ください。
会社破産の手続の流れについて
弁護士(当事務所)に依頼する場合の会社破産の手続の流れは以下の通りです。
より詳しくお知りになりたい方は「会社破産の手続・スケジュール①・②・③」をご覧ください。
1. 法律相談から委任契約まで
① 法律相談の予約・相談日の調整
まずはお電話又は問い合わせフォームから法律相談の予約をしてください。
お電話又はメールで法律相談の日時を調整し確定いたします。
当事務所の初回相談は無料です。オンライン相談も実施しています。
詳細は「無料オンライン相談 無料法律相談」をご覧ください。
② 法律相談
ご調整した日時に、法律相談を行います。法律相談は、必ず当事務所所属の弁護士が対応します。
法律相談では
- 今後の見通し
- ご相談者がとるべき対応
- 弁護士費用
などについてご説明します。
ご相談の際には、債権者一覧表や会社の概要をまとめたメモ等をご用意頂けると、弁護士がスムーズに事案を把握し適切なアドバイスが可能ですので、できるかぎりご用意ください。
法律相談のみで解決した場合はこれで終了となります。
③ 委任契約の締結
弁護士が説明した解決策や弁護士費用についてお客様がご納得され、当事務所に依頼を希望される場合、後日、当事務所との間で委任契約を締結します。
一度相談したら依頼しなければいけないということはありません。相談終了後、ゆっくり検討して頂くことも可能です。
2. 委任契約から破産申立まで
① 受任通知の発送
委任契約後、お客様と協議し、当事務所から債権者(金融機関や取引先など)に受任通知を発送いたします。
受任通知が債権者に届いた時点で、債権者からの取立行為は止まり、債権者からの連絡は当事務所所属の弁護士が対応します。
② 弁護士費用等の準備
債権者からの取立が止まっている間に、弁護士費用・裁判所費用の準備をして頂きます。裁判所への破産申立ては、費用の準備が完了してからになります。
会社に残存している資産(預貯金・今後入金予定の売掛金など)から費用を準備して頂くことが可能です。
会社に資産が一切残っておらず、分割を希望される方は、数か月かかる場合があります。
③ 必要書類の準備
弁護士費用の準備ができましたら、破産申立に必要な書類の準備に入ります。
申立書式をお渡ししますので、まずはそれにお客様の方で記入して頂き、弁護士と協力して準備することになります。
また、必要資料として
- 会社の登記簿謄本
- 決算報告書
- 預金通帳のコピー
なども必要となります。
これらの必要資料は、会社によって異なりますので、弁護士から丁寧にご説明いたします。
3. 破産申立から終了まで
① 破産申立・破産手続開始決定
申立書類・必要資料の準備が整いましたら、当事務所で裁判所に破産申立てを行います。
破産申立てから数日後、裁判所が破産手続開始決定を行い、破産管財人が選任されます(会社破産の場合には必ず選任されます)。
破産管財人は、
- 破産会社の財産管理
- 財産調査
- 換価処分
- 債権者への配当
② 管財人面接
破産申立から1~2週間後、お客様と破産管財人との間で打合せを行います(管財人面接)。
管財人面接には、破産管財人の意向によってお客様と1人で行う場合もあれば、当事務所の弁護士が同席することもあります。
管財人面接では、申立書の内容確認や、追加資料の提出を求められることがあります。
会社の代表者には破産管財人に対する説明義務があるので(破産法第40条)、虚偽の説明などをしてはいけません。
③ 債権者集会
管財人面接から約2~3か月後に、裁判所で債権者集会が行われます。
債権者集会は、破産管財人が行った業務内容について、裁判所と債権者に報告を行う集会のことをいいます。
債権者集会には、当事務所の弁護士がお客様と一緒に出頭します。
債権者集会までに管財人の業務が終了していれば、破産事件は終了します。
終了していなければ、約3か月の間隔でその都度債権者集会が行われます。
1回で終了することもあれば、不動産の売却や売掛金の回収などの業務がある場合には複数回かかる場合があります。
④ 配当手続
会社に一定の財産が残った場合、債権者への配当手続が行われます。
破産管財人が全て対応し、お客様がなにか対応することはありません。
会社に配当できる財産がない場合には、配当手続は行われずに破産手続は終了します(破産手続廃止決定)。
⑤ 破産手続終結決定
配当手続が完了すると破産管財人が行う業務はすべて終了となり、破産手続は終了します(破産手続終結決定)。
なお、個人破産と異なり、会社破産の場合には免責手続はありません。なぜなら、会社は破産手続の終了によって法人格が消滅するので、免責手続がそもそも必要ではないからです。免責手続がなくても、会社の負債は全て支払わなくてよいことになりますので、ご安心ください。